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大阪地方裁判所 昭和61年(わ)1845号 判決 1988年11月16日

本店所在地

大阪市生野区巽中一丁目二番一二号

株式会社グローバル・ハイテック

(右代表者代表取締役 佐藤哲夫)

本籍

同市東成区大今里南一丁目二六番

住居

同区大今里南一丁目一七番二二-三〇八号

会社役員

佐藤哲夫

昭和二六年九月一九日生

本籍

同市生野区新今里三丁目一二〇番地の一

住居

同区中川一丁目二番二一-六〇一号

会社役員

角野博光

昭和一八年一一月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官藤村輝子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社グローバル・ハイテックを罰金五〇〇〇万円に、被告人佐藤哲夫及び角野博光を懲役一年六月に処する

被告人佐藤哲夫及び同角野博光に対し、この裁判確定の日から三年間それぞれのその刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社グローバル・ハイテック(昭和六〇年一二月一日、株式会社マックス製作所から商号変更。以下、被告会社という。)は、大阪市生野区巽中一丁目二番一二号(同年六月一日、同区巽北三丁目一二番一〇号から移転)に本店を置き、娯楽機械の製造業を営む資本金五〇〇万円の株式会社、被告人佐藤哲夫は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているもの、被告人角野博光は、被告会社の取引先株式会社マックス商事の代表取締役であり、かつ、被告会社の出資者で共同経営者でもあるものであるが、被告人佐藤哲夫及び同角野博光は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、分離前の相被告人中谷善秋及び同古田収二と共謀の上、売上の一部を除外するなどの方法により、その所得の一部を秘匿した上、被告会社の昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における実際所得金額が四億四六〇三万九七九九円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五九年六月二八日、同市生野区勝山北五丁目二二番一四号所在の所轄生野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九一七万七九九円でこれに対する法人税額が一六五万六二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億九〇八二万五〇〇円と右申告税額との差額一億八九一六万四三〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告会社代表者兼被告人佐藤哲夫及び被告人角野博光の当公判廷における各供述

一  第一回公判調書中の被告会社代表者兼被告人佐藤哲夫及び被告人角野博光の各供述部分

一  被告人佐藤哲夫の検察官に対する供述調書四通(証拠等関係カード検察官請求分番号144ないし147)

一  被告人角野博光の検察官に対する供述調書四通(前同番号152ないし155)

一  第八回ないし第一一回各公判調書中の証人中谷善秋の供述部分

一  第一一回ないし第一三回各公判調書中の証人吉田収二の供述部分

一  井野勝哉の検察官に対する供述調書(前同番号61)

一  収税官吏作成の査察官調査書(前同番号60)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(前同番号7)

一  生野税務署長作成の証明書(前同番号14)

一  検察事務官作成の捜査報告書(前同番号213)

一  法人登記簿謄本(前同番号18)

(法令の適用)

被告人佐藤哲夫及び同角野博光の判示各所為は、刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するもので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期の範囲内で右被告人両名をそれぞれ懲役一年六月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間それぞれ右刑の執行を猶予することとする。

さらに、右被告人らの所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、その金額の範囲内で被告会社を罰金五〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告会社の出資者で共同経営者でもある被告人角野とその代表取締役である被告人佐藤が、同和団体の組織を利用すれば容易に脱税の摘発を免れるものと軽信し、分離前の相被告人吉田及び同中谷と共謀の上、会社の不況時に備え資金を蓄積するなどのため、一事業年度のみで一億八九〇〇万円余りの多額の法人税を免れたという事案であって、ほ脱率が約九九パーセントと高率に達している上、犯行の動機にも格別酌むべき事情のないことなどからすると、被告人ら及び被告会社の刑事責任は相当重いものがあるといわなればならない。

しかしながら、被告人らは現在その非を認めて反省の情を示しており、被告会社においても、本件ほ脱税額に関し、本税、附帯税とも既に納付済みであること、同和団体の組織を利用するこの種ほ脱事犯については、従前の税務当局の対応にも問題がなかったとはいえないこと、被告人佐藤には業務上過失傷害罪による罰金以外の前科がなく、被告人角野には、遊戯機販売に係る常習賭博幇助罪による懲役前科があるものの、過去一〇年余りの間は一応真面目に過ごしてきたものと認められることなど、被告人ら及び被告会社に有利な事情も存するので、これら諸般の事情を考慮して、主文の刑に処するのが相当と考えた。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 白井万久 裁判官 松本信弘 裁判官 的場純男)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

<省略>

<省略>

別紙(二) 税額計算書

株式会社グローバル・ハイテック

<省略>

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